♬アーティスト インタビュー♬ 作曲家・ミュージカルソー(のこぎり)奏者 サキタハヂメさん



サキタ ハヂメ

作曲家・ミュージカルソー(のこぎり)奏者。世界初の「のこぎり協奏曲」を作編曲し各地のオーケストラと演奏。国内外で精力的に演奏活動。作曲家として2020NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「おちょやん」の音楽を担当。NHK Eテレ「シャキーン!」、日本テレビ「フランケンシュタインの恋」「妖怪人間ベム」「ど根性ガエル」、WOWWOW「宮沢賢治の食卓」、NHK  木曜時代劇「銀二貫」などのドラマ、CM、ミュージカル、演劇公演などに楽曲提供多数。平成16年大阪市「咲くやこの花賞」、平成23年「文化庁芸術選奨文部科学大臣新人賞(芸術振興部門)」受賞。6年目を迎える「奥河内音絵巻」、「山を鳴らすプロジェクト」など既存の音楽家の枠を超えた規模での音楽表現を模索し続けているアーティスト。

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ミュージカルソー、のこぎりで演奏を初めたきっかけは?

 

本当のことが聞きたいですか(笑)?ファンタジーではなく?

元々、ギターやウクレレは好きで、高校時代はバンドやってというごく普通のアプローチで音楽を始めました。

 

で、19歳の時、街でチンドン屋に出会って、何かものすごく惹かれたんです。鐘や太鼓やトランペット、クラリネットを演奏しながら宣伝する、あれです。で、そこから大学時代はずっとチンドン屋をやってました。 

日本のルーツである民謡や演歌で、人に何かを訴えるというやり方に、色んな可能性を感じてのめり込んでいました。

 

その時代に東京で、落語家でのこぎり奏者の都家歌六師匠に出会ったんです。

 

僕は関西人なのですが、大阪では「のこぎり」と言えば横山ホットブラザーズというお笑い界の巨匠を皆が思い浮かべると言う土壌があったんですね。「お前はアホか~」ってやつです。

 

それが歌六師匠ののこぎりは全然違って、チェロの弓を使って哀愁漂う音色を奏でて…でもそこには笑いもあって、とにかく今まで聴いたことがない音楽だったんです。衝撃を受けました。それから自分で色々調べて、独学で始めたんですね。

 

その後、歌六師匠が仕事で大阪にいらした時に会いに行ったんですが、「それだったら”のこぎり音楽協会”の大阪支部を任せるよ」と言われて。そんなノリでのこぎりにハマっていったわけです。

 

素朴な疑問なんですが、演奏のためののこぎりはどこで調達したのですか?

 

大阪中の金物屋さんを探して廻りましたよ(笑)

でもどこも「西洋のこぎりは置いてない」と言われました。

たまたま東急ハンズに行ったら似たものがあって、それで始めたんです。

その後歌六師匠に会って、アメリカから取り寄せていると聞いたんですね。アメリカでは1920年代にすごく流行ったそうですが、それでもやはりニッチな楽器で、簡単には手に入らないです。

 

のこぎり演奏自体はどこの国で始まったのですか?

 

諸説あって、スカンジナビア、南米、中国とか。僕はスカンジナビアかなと思ってますが。木を伐採するのこぎりを、作業の合間に遊びで鳴らしていたことが始まりだそうです。

 

珍しい楽器で、演奏仲間を探すのも大変でしたよね?

 

それが、”のこぎり音楽協会”は、ゴンチチのチチ松村さんと歌六師匠が立ち上げたので、イベントをやると結構人は集まっていたんですよ。 

そんな中僕は早々に、「のこぎり合奏のためのオーケストラ」を作ったんです。テレビ等でも面白いと取り上げてくれて、出演のチャンスは沢山ありました。

 

その中で、ロサンゼルス・フィルのデビッド・ワイズというオーボエ奏者が、実は世界的なのこぎり奏者だという話を聞いたんです。会いたいなと思っていたら、ラスベガスでジャパンフェスがあるので行こうという話になって。だったらそこで共演したいとお願いしたら、OKということで共演出来たのです。

 

これが素晴らしい体験でした!歌六師匠の演奏とは対照的というか。オーケストラでオーボエ吹いてる人ですから、当たり前ですが正確なピッチで。歌六師匠の情念、魂、哀愁を肌で感じさせる演奏と、ワイズの正確でパーフェクトな演奏、この二つは究極ののこぎり演奏で、それを両方聴けたのは本当に幸運でした。そして、この二人の真ん中に自分の立ち位置があるなと思いましたね。

 

のこぎりは音楽のジャンルを選ばないということですね

 

本当にそうなんです。クラシック、ポップス、ジャズ、落語もね。でも、どこにいてもアウェーな感じで、それが僕の性格には合っているんですね。

本質的に面白し、美しい…そうそう、合唱が美しくハモった時に、譜面に書いてない「天使の声」ってあるでしょう?倍音が重なって出る、上から光が降り注ぐような美しい音。あれがのこぎりだとダイレクトに出せるんです。

雨が降った後太陽が出て、虹が出ますよね?その虹がいきなり、奏者の耳と感じ方によって自由に出せるわけです。すごいポテンシャルを秘めた楽器なんです。

 

演奏法のメソッドはあるのですか?

 

それが確立されていないのが、また僕がのこぎりを好きな理由でもあるのです。弓のボウイングとか、作ろうと思えば出来なくないのですが、皆が好きなように好きなジャンルの曲を弾くというのが良いんです。自由度の高さが魅力だと思っています。

 

12月の熊本公演はオーケストラとの共演ですね。抱負をお聞かせください。

 

世の中にオーケストラ+のこぎりで演奏する曲自体、数曲しかないので、もう自分でつくっていくしかないわけですね。「のこぎり協奏曲」をかいた時も、本当に大変でした。

僕は基本的にチャレンジできることは何でもやるんですが、なんせ学校で勉強してきたわけじゃなかったので…。

指揮者の先生に「このままスラーなしで演奏したら、クラリネットの口が血だらけになるわ!」と言われたりで(笑)。

 

でも、ロイヤルチェンバーオーケストラの皆さんと仲良くなるにつれて、オーケストラそのものへの向き合い方、音楽を作っていく楽しさを学びました。沢山の人が演奏するわけで、それぞれの音と人間が作る人生劇場みたいなものですよね、オーケストラって。

 

そして演奏家は本番で決めることに命をかけているわけで、時空芸術というか、音楽芸術の凄さを感じます。

 

「奥河内音絵巻」というプロジェクトについて教えてください

 

僕が奥河内の山々とそこに暮らす人々に強く突き動かされて、音楽と共鳴させたい、「山を鳴らしたい」と、自然と一体となった音楽創りを目指して立ち上げたプロジェクトです。今年で7年目、11作の舞台と映像作品を作ってきました。今はその進化系で、自然の中で”光と音の絵本”を作っていくのが面白いなと。光と音って似ていて、面白いんですよ。

 

今後、歌との共演については?

 

ミュージカルソーの音が人間の声に似ているということもあって、歌との共演は是非やりたいんです。 

教会コンサートとか、良いですよね。音が天から降り注いできますから。ステンドグラスからの光と一緒に…素晴らしいですね。いやぁ、教会の演出ってずるいわぁ、と思いますよ(笑)

 

イタリアのフィレンツェの教会でコンサートをしたことがあるんですが、パイプオルガンと共演したんですね。のこぎりの音もパイプオルガンの音も上から降り注いできて、それは素晴らしかったです。

 

で、アヴェ・マリアとか何曲か演奏したのですが、聴衆が年配の方が多かったこともあり、「健康」のための曲という事で、「ラジオ体操第一」を演奏したんです(笑)

素晴らしく荘厳なラジオ体操第一で、イタリア人のお客様は感動で泣いてました。多分知らない曲だと思うけど(笑) 

 

面白さと美しさを同居させられるのが、のこぎりの魅力です。 

半分面白がって、半分は本気、みたいな感じで。陰と陽、月と太陽みたいですが、それが僕に合っていると思います。

 

ようやくコロナ禍を乗り越えようとする、歌を愛する読者の皆様にメッセージを!

 

音楽の演奏が出来なくなる日が来ると言うこと自体、想像すらできなかったのですが、 

これが再開された時には、その歓びは爆発的だと思うのです。 

そして、新しいステージは必ずや、もっと楽しくもっと素晴らしいものになるはずです。 

面白いことをやりましょう!

 

サキタさんのミュージカルソーが聴いてみたくなったら、下記よりコンサート情報をどうぞ♪