新見 準平 にいみ じゅんぺい
1985年大分県生まれ。大分県立芸術緑丘高等学校にてピアノ、チェロを学び、東京藝術大学、同大学院では声楽を専攻。2009年東京労音「第九」にてバリトン歌手としてデビューし、国内外にて国際的な演奏家との共演、また第19回日本モーツァルト音楽コンクール優勝、L.Welitsch国際声楽コンクール入選などの経験を積んだ。2015年より九州を拠点に声楽家、声楽教師、指揮者として活動。
コンクールの審査員やテレビCMへの出演など幅の広い活動は注目を集めている。
Twitter: @jump_213_ei
最近の活動状況を教えてください
大分県を拠点に、オペラやリサイタルを全国各地でやっています。
昨年コロナで中止になったものが順延にということもあるのですが、この状況でも音楽を届けられるよう主催者の皆さん大変工夫されているということですよね。
歌手だけでなく高校大学での指導育成、合唱団、吹奏楽、オーケストラの指揮と活動は多岐に渡るのですが、それぞれの分野の現状を見ていて、やはり合唱は中々難しいですね。特に地方では未だ活動出来ない団体が多いです。
そんな中、新しく合唱団を作られたそうですね
はい、中学、高校と合唱を経験した若い人たちが、歌い続けることが出来ない現状を何とか打破したくて。今年の1月に、地元大分で18歳から35歳のメンバーで合唱団を結成しました。
マトリカリアコールという合唱団ですが、九州大会で1位の評価をいただき、11月の全日本合唱コンクールに出場します。初出場でですので、稀なことですよね。
歌っていた環境や場所の違いから出来る学閥や派閥のようなものを超えた合唱団を作りたかったのです。
素晴らしいですね!結成して僅か1年足らずでの快挙ですか!
何か特別な練習法があるのでは?
今年は審査が録音だったのですが、その録音が独り歩きして全国まで行ってしまったような(笑)そういう意味では、コロナが生んだ意外な展開とも言えますね。
特別な練習法なんてなくて、楽譜に書いてあることを、自分のコンセプトやイメージを持って歌おうと。
僕自身、コンクール審査はしたことあるけど、出場したのは初めてで、ビギナーズラックですね。
コンクールに出場しようとなった経緯は?
大分からの全国へ発信、アピールですね。地方も元気に活動してるんだぞ、と。
新見さんと歌との出会いを聞かせて下さい
高校ではピアノ専攻だったんです。でも、同級生の伴奏を担当する中で、独りで音楽に向き合うより皆で作り上げるほうが好きだなって。
歌との出会いは、高校一年の時に歌った第九です。この時の、身体の細胞が動き出すような感動は、今までの生涯を通じて一番かもしれません。この音楽の一部に自分がなったことに、ものすごく突き動かされたんです。
で、いつも第九を口ずさんでいたら、ある日歌の伴奏の時に歌の先生に「ちょっと発声してみない?」と。
それがきっかけで歌の門を叩いたんです。高校時代に出たコンクール、1年目はピアノで出て優勝、次の年は歌で出て優勝して(笑)かなり特殊だったのですが、自分がやってみたいということに素直でいられた環境には感謝しています。
だから、大学に入るまでは第九しか知らなかったんですね。それが、大学のサークルでバッハを知り、ヘンデル、モーツァルトと広がっていったんです。その頃から先輩に頼まれて合唱指導を始めました。
ところが、この合唱指導で喉を壊しまして…手術したんですが、一時は歌手を諦めて合唱指導に専念しようかと思った時期もありました。でも、その後あるコンクールで優勝して、副賞でウィーンに2年留学させて頂いたんですね。その後イタリアにも行き、素晴らしい経験をしましたが、親を頼り続けるのも良くない、ということで九州に帰り先生として学校で働き始めました。
自分が今まで経験したことを地元に還元するためにも、歌手活動も行いつつ合唱団を作ったり、音楽祭をやったりしています。第九以外のレパートリーを増やそうと…カルミナ・ブラーナや、国民文化祭ではマーラーの復活もやりました。
そんな中で、合唱指導だけではなくオケや吹奏楽も振って、となって。ここでピアノ専攻だったことが幸いしました。合唱、オケ、吹奏楽の横のつながりも持てましたし。これからそれをどうやって継続していくかが課題ですね。
新見さんにとって合唱とは?
自分は歌手として「歌で表現できる」ということが一つの強みです。
それがあって、更に合唱で人と人をつなげていくことが出来ればなと。
多様性が認められる時代だからこそ、個の集合体である合唱は素敵だなと思います。
異なる言語や人種がお互いにリスペクトするから生まれるものでもありますし。
長年活動を続けている「シングインメサイア」について教えて下さい
1975年に始まり46年に渡り続いている素晴らしいイベントですが、私はソリストとして4年ほどソロを歌わせて頂き、その後指導に携わるようになりました。今まで経験したどのメサイアとも違って、四方八方、客席からも歌声で、まさに合唱の渦ですね!
ソロも合唱も聴衆もそうですが、メサイアという曲に惹かれて集まってくるわけで…どんな時代でも色あせない普遍性を感じますね。
とてもリピーターが多いと聞いていますが、何度も歌いたくなるメサイアの魅力とは?
それはもう、決定的に「難しい」からでしょう!
難しい山に頑張って挑戦したら、あれ?登れちゃった!みたいな(笑)
そして、もっと難しいルートで登りたい、もっと上手になりたいと、毎回毎回新しい達成感があるから、何度も歌いたくなるのではと思います。練習で克服出来るスポーツ的要素と精神鍛錬のバランスも素晴らしいですね。
プライベートな時間は何をされていますか?音楽鑑賞ですか?
ウォーキング、サイクリングや登山ですね。大分は素晴らしい自然がありますし。
聴く音楽は、クラシックに限らずプログレとかジャズとか。自分が演るジャンル以外は聴く喜びを感じますし、人生を豊かにしますよね。
最後に、我慢の日々が続いている合唱愛好家にメッセージを!
私も昨年は歌手、合唱指導者として活動出来ない日々を過ごしました。
今、オンライン等で何とか歌の練習が出来るよう、色々な工夫がされていますが、やっぱり独りでは心細いですよね。皆さんの不安な気持ちはよく分かります。
でも、私たちも同じように、皆さんが離れて行ってしまうのが怖いんです。
再び以前のように歌える日が来るまで、今まで歌ったことのないジャンルの楽曲も聴いてみるとか、見識を広げてください。
より豊かな音楽ライフが送れるはずです。歌を通じて人と人はちゃんとつながっています。希望を捨てずに頑張りましょう!
♩コンサートのお知らせ
新見準平/谷本喜基 歌曲の午後
Lieder-matinée
2021年10月31日(日)
14:30開場 15:00開演
早稲田奉仕園スコットホール
お問合せ:080-3411-6499
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